公益社団法人 北海道理学療法士会

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理学療法士の皆様へ

知識のマグマ

Vol.38 ウィメンズヘルス理学療法〜女性の尿失禁を中心に〜
北海道医療大学 大内 みふか

1.はじめに
ウィメンズヘルス理学療法の対象は、誕生してから人生を終えるまでの女性である。女性の生涯では、女性ホルモンが健康状態に大きく影響し、思春期から老年期までのライフステージを通して、健康状態が変化していく。また、妊娠、出産や閉経などを起因とした問題の中には、機能障害やQOL に支障をきたす場合があり、理学療法士が適切な評価・介入を行うことによって、女性特有の問題から生じる機能障害の改善及びQOL 向上を支援できると考える。
 今回は女性に頻繁にみられる尿失禁について紹介する。

2.尿失禁
 尿失禁は膀胱内圧が尿道内圧よりも高くなったときに生じる。尿失禁は男性よりも女性において有症率が高いことが知られている1)。その理由としては、骨盤や骨盤底の解剖学的な差異、出産の影響がある。特に、経腟分娩による①骨盤の神経や筋の損傷、②結合組織の支持性の損傷、③胎児からの圧迫による骨盤内血管の損傷、④直接的な尿路損傷は、腹圧性尿失禁の主なメカニズムであると言われる4)
 尿失禁の定義:不随意に漏れるという愁訴である2)
・腹圧性尿失禁:労作時または運動時、もしくはくしゃみまたは咳の際に、不随意に尿が漏れるという愁訴
・切迫性尿失禁:尿意切迫感と同時または尿意切迫感の直後に、不随意に尿が漏れるという愁訴
・混合性尿失禁:尿意切迫感だけではなく、運動・労作・くしゃみ・咳にも関連し不随意に尿が漏れるという愁訴 つまり、腹圧性+ 切迫性= 混合性尿失禁である。
・女性の尿失禁罹患率3)は、腹圧性尿失禁 : 切迫性尿失禁 :混合性尿失禁= 約50%: 約11% : 約36%

3.尿失禁に対する保存療法
 ガイドライン(6th International Consultation on Incontinece Recommendation of the International scientific Committee)では、適切な生活指導、骨盤底筋トレーニング、計画療法、行動療法、薬物療法が、初期治療として推奨されている4)

4.尿失禁の行動療法5)
 1 生活指導:体重減少 禁煙 飲水指導 (過度の飲水 カフェイン コーヒー アルコール 炭酸飲料を避ける) 
   便秘

 2理学療法
  骨盤底筋訓練 バイオフィードバック 電気・磁気刺激療法

 3計画療法
  膀胱訓練:できるだけ我慢し徐々に間隔を伸ばす
  習慣排尿法:排尿パターンに合わせて、失禁前に排尿させる
  定時排尿:決まった時間で排尿
  排尿促進法:治療者が排尿開始を促す

 行動療法統合プログラム
 医療専門職が種々の行動療法を組み合わせる

5.おわりに
 今回は尿失禁の基本的な知見について述べさせて頂いた。
次回は臨床における理学療法士の取り組みについてお伝えする予定である。最後に、本邦の理学療法士による尿失禁への関わりが、悩みを抱える多くの女性を支える一助となることを、切に願う。

【引用文献】
1.Hunskaar S, et al. The prevalence of urinary incontinence in women in four European countries. BJU Int. 2004; 93:324–30.
2.本間之夫, 他. 下部尿路機能に関する用語基準 国際禁制学会標準化部会報告. 日本排尿機能学会誌. 2003; 14:278–89.
3.Hannestad YS, et al. A community-based epidemiological survey of female urinary incontinence: J Clin Epidemiol.2000; 53:1150–7.
4.Abrams P, et al. (Eds) Incontinence 6th Edition (2017). ICIICS.International Continence Society, Bristol UK, ISBN:978-0956960733.
5.日本排尿機能学会過活動膀胱診療ガイドライン作成委員会(編):過活動膀胱診療ガイドライン(第2 版).リッチヒルメディカル,東京.2015.