公益社団法人 北海道理学療法士会

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理学療法士の皆様へ

知識のマグマ

Vol.39 ウィメンズヘルス理学療法2〜女性の尿失禁を中心に〜
北海道医療大学 大内 みふか

  前回は、経腟分娩(特に分娩第2 期:子宮頸部の全開大(10cm)から児が生まれるまで)において、骨盤底筋群、神経、結合組織が、伸張や圧迫されることによって骨盤底の組織損傷が生じ、その損傷が女性の腹圧性尿失禁のリスクファクターであることを述べました。今回は、腹圧性尿失禁に対する理学療法の実際について説明したいと思います。
 対象は、主に経産婦の若年から中高齢まで幅広い年代の女性です。出産を経験された中高齢女性の場合は、閉経によって尿失禁が生じやすくなることも報告されています。ラットを用いた基礎実験では、エストロゲンを産生する卵巣摘除後3 ヶ月群は、正常群と比べて、くしゃみをさせた時の尿失禁が高い割合で観察されたと報告しています1
 ガイドライン(6th International Consultation on Incontinece Recommendation of the International scientific Committee)によると、尿失禁における治療の第一選択は、保存療法です。保存療法は、適切な生活指導、骨盤底筋トレーニング、行動療法を含みます。これに関わるのが理学療法士です。私が留学していたオーストラリアの産科病棟では、理学療法士が前日に出産されたお母さんを回診し、排尿の状況や産後の痛み、動作などを確認し、問題がある場合は、外来の理学療法士のところに来るように説明していました。ウィメンズヘルス理学療法専門のリハビリテーション室はベッド1 台、机と椅子という個室で行い、プライバシーが守られる工夫がされていました。主な内容は、次の通りです。

1.評価: 問診(現病歴、既往歴、出産歴:出産時期、妊娠回数・出産回数・出産方法)、尿失禁頻度と量、生活の質への影響)、1 日あたりの排尿回数と量、水分摂取の確認:3 日間排尿日誌の記載、残尿量測定、骨盤底筋の筋機能
2.理学療法介入: 生活指導では、(減量)尿失禁を有する肥満女性に対して食事療法を実施した無作為化比較試験では、腹圧性と切迫性尿失禁が治療群:対照群=60%:15% と減少しました2。( カフェイン摂取制限) 排尿筋過活動では、正常者に比べカフェイン摂取量が多かったとの報告があります3。(適切な水分摂取) 20-25ml/Kg/ 日(夜間頻尿診療ガイドライン)。
 骨盤底筋トレーニング:骨盤底筋の反復的な随意収縮により筋力増強を図り、腹圧上昇時に収縮する骨盤底筋の筋力を改善し尿失禁の軽減を図ります4。日常生活において咳、くしゃみ、重量物持ち上げなどの腹圧上昇時直前から上昇中に、タイミングを合わせて意識的に骨盤底筋を収縮させることを学習します(Knack)。患者自身が実施するトレーニングの継続率が症状維持と改善を左右します5
 膀胱トレーニング:切迫性尿失禁や過活動膀胱の患者に対して実施します。これは尿意を感じてもすぐに排尿せず、排尿を我慢し、膀胱容量を増大させる方法です。排尿間隔が3-4 時間となるまで、15 〜 30 分程度ずつ延長します。

おわりに
 2 回に渡り、ウィメンズヘルス理学療法、特に泌尿器科や産婦人科領域における理学療法の一部を紹介させて頂きました。今後本邦において更に尿失禁に対する理学療法の臨床が普及すること、臨床を支えるEvidence Based Medicine のためのエビデンスの構築が重要であると考えています。

【引用文献】
1.Kitta T, et al. Effects of ovariectomy and estrogen replacement on the urethral continence reflex during sneezing in rats. J Urol. 2011; 186: 1517–23.
2.Subak LL, et al. Vittinghoff E, Brown JS. Weight loss: a novel and effective treatment for urinary incontinence. J Urol. 2005; 174: 190–5.
3.Arya LA, et al. Dietary Caffeine Intake and the Risk for Detrusor Instability : A Case-Control Study. 2000; 96:85–9.
4.Dumoulin C, et al. Pelvic floor muscle training versus no treatment , or inactive control treatments , for urinary incontinence in women ( Review ). Cochrane Database Syst Rev. 2018; CD005654.
 5.Ouchi M, et al. Medium-term follow-up after supervised pelvic floor muscle training for patients with anterior vaginal wall prolapse. Eur J Obstet Gynecol. 2018; 225: 95–100.