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理学療法士の皆様へ

知識のマグマ

Vol.5 変形性膝関節症

北海道大学大学院機能回復学分野 山中 正紀

本邦における変形性膝関節症(knee osteoarthritis:以下、膝OA)患者は推計1000万人にものぼるとされ、現在の高齢化社会において今後も増加が予想されています。膝OAの発症要因は、年齢、性別、遺伝、人種、骨密度、肥満、外傷歴、筋力低下、関節の変形、オーバーユース等と多岐にわたる。しかしその進行要因は力学的負荷によるところが大きい。膝OAの保存療法、特に理学療法において、力学的負荷への介入は必須であり、膝関節の正常運動の理解はもとより、膝OAがどのような病態運動を有しているかを十分に理解しておく必要がある。


  • 過大な内反モーメント

 膝OAは内反変形を伴うが、この内反変形(O脚)の進行は外的膝内反モーメントの高まりが考えられている。過大な内反モーメントは、膝の内側コンパートメントにより大きな圧縮応力を及ぼし、内側の軟骨の摩耗や内側半月板損傷を生じさせる。このような過大な膝内側の応力は内反変形を悪化させ、より一層膝内反モーメントが増大する。この力学的応力は日常生活における繰り返し負荷であるという認識は重要である。
 膝内反モーメントを増大させる要因として静的要因と動的要因があり、静的要因は内反膝、内反股、過大な大腿骨前捻角、過大な脛骨内捻角や膝後外側支持機構(PLS)不全などの構築学的要因である。外側側副靭帯、膝窩筋腱、膝窩腓骨靱帯などのPLSは脛骨の外旋、内反を制動し、特に立脚初期において膝内反モーメントに対する主要な静的要素である。PLS不全(緩み)は内反不安定性を呈する。
 動的要因として大腿四頭筋筋力低下が挙げられる。大腿四頭筋は膝関節の安定性において重要であり、伸展作用のみならず内反モーメントを制動するとも言われている。股・膝・足関節の可動制限が考えられる。膝OAの進行に伴い股関節や脛骨が外旋肢位となり、膝関節の屈曲拘縮、脛骨の足関節の背屈制限と相まって内反アライメントとなり膝関節の内反モーメントを増大させる(図)。



典型的なOA膝の荷重連鎖

股・膝・足関節の可動制限による内反アライメントによる内反モーメントの増大。

 さらに内反アライメントにより股関節は外転位となるため、中殿筋の起始部と停止部間の距離が短縮し、外転筋の張力発生の効率が低下すると考えられ、トレンデレンブルグ徴候・デュシェンヌ徴候が見られる。


  • おわりに

 OA膝における典型的な病態運動は過大な外的膝内反モーメントと脛骨の外旋偏位である。膝内反モーメントを増大させる静的要因は理学療法において介入は困難であるが、動的要因に関しては介入可能であり、この病態運動を悪化させる運動連鎖を適確にとらえることが、機能評価のポイントである。

{引用文献}井野拓実・他:変形性膝関節症の病態運動学的理解と機能評価のポイント.理学療法26:1078-1087,2009